2008年1月に新国立劇場において、プッチーニの超名作オペラ「ラ・ボエーム」が上演されます。ここで何回かのシリーズ(体力が続けば!?)に分けて、このホームページに立ち寄られた皆さんにこの素晴らしきオペラの魅力をお伝えしようかと思います。
このオペラの主題は「パリに住むボヘミアンたちの青春群像・愛と精神の豊富さ」とでも言いましょうか、お金がなくとも毎日を楽しく有意義に『生きる』ことに命を燃やす若さ、病気に蝕まれながらも一瞬一瞬を『愛する』事に捧げる素晴らしさを、プッチーニは余すところなく表現しています。
僕が初めてこのオペラと出会ったのは、東京芸大の2年、故東敦子先生の東京音大でのクラス発表会でこのオペラの抜粋を演奏しました。ソプラノふたりとテノールとバリトン2人バス1人の主要キャスト、男性陣は僕が芸大から調達しました。相模大野の駅前のホールで、まさに青春群像とも呼べる思い出を持っています。
当時カルロスクライバーがミレッラ・フレーニとペーター・ドヴォルスキーで東京文化で演奏した事は忘れられない出来事でした。バイオリンの鳴らし方がこの世のものとは思えないほど美しくかった。
このオペラ、オープニングは屋根裏部屋から始まります。詩人ロドルフォと画家マルチェッロは、いつものようにああでも無いこうでもないとべちゃべちゃおしゃべりしながら、ふざけながらそれぞれの仕事をしています。時はクリスマス。外の煙突は夕餉の支度でたくさんの煙を吐いているというのにいったい家の暖炉は何をサボっているのだろう、あの雪に覆われた森の中に有るものは何で家にないのだろう?それならこの椅子を壊して薪にしよう、とやけになって言うマルチェッロを制してロドルフォは「僕の作品を火種とさせよう!この世にとっては重大な損失であるが!」と原稿用紙を暖炉にくべます。そこに現れた哲学者のコッリーネ、この騒ぎに加わって、あっという間に消え行く炎でつかの間の暖を取ります。もちろんロドルフォへの皮肉・理屈を忘れずに。程なく音楽家ショナールが、薪と銀貨とボルドーワインとパンを伴ってそこに現れます。ご婦人の前でバイオリンを演奏し、(本当は飼っているオウムの前で彼に聴かせる為に)お金を得る事ができて意気揚々の凱旋なのです。自慢げに事のいきさつを語るショナール、でもそんなの全く連中は聞いていません。買ってきたものを食べてしまおうという意見を制して、「ワインは家で、でも食事は外で、今日はクリスマスイブなんだから!」と乾杯の杯を上げます。そこに急の来訪を告げるノックの音が。
イタリアに留学してすぐにいくつかのオペラに出演しましたがその最初の演目がボエームでした。ミラノとファエンツァという陶器で有名な町やピアチェンツァなどで、ピアノ伴奏版で、当時また駆け出しの若者が集まって(バリトンにアルベルト・ガザーレなど)本当に楽しかった!イタリア語で舞台で歌う事、イタリア語で芝居をする事、イタリア人の表現を目の当たりにした事、それに対するお客さまの反応・・・すべてが今まで体験した事の無いものでした。
特に1幕のオープニングからミミ登場までの、男性陣のばたばたぶりはある意味このオペラのもう一つの見所です。始め2人で、そして3人、4人と舞台上に人間が増え、皆一見仲悪そうですが目前に迫った問題には奇跡的な団結力で解決してしまう、ああこういう関係っていいなと男たちに思わせるような、そんなシーンを今回の演出家、粟国淳さんがどのように表現するか、これは僕にとっても大きな楽しみです!
さてノックの主はこの部屋の大家さん・べノアさんでした。溜まった3か月分の家賃の取立てを以下にやり過ごそうか、慌てふためく皆を尻目に、マルチェッロは一計を案じ即実行に打ちします。それは、おだてて調子の乗ったところに言いがかりをつけて追い出してしまおうという作戦。はじめは何をやっているのかぴんと来なかった仲間たちも、だんだん分かってきて彼に協力します。「いろいろなご婦人がいらっしゃるけど、その中でがりがりにやせた人はどうかと思うよね!そうたとえるなら、うちの嫁さん!」その一言を捕まえて彼らはべノアの不貞をなじり部屋から追い出します。さっき皆で乾杯したグラス1杯のワインをを3か月分の家賃に変えてしまいました!おめかしをして出かける3人に対して、遣り残しの仕事を片付けてから合流するから先に行っててと伝えるロドルフォ、さあこの辺から運命のドラマが動き始めます。ろうそくの明かりを机に寄せて原稿を書き始めますが、なかなか霊感が沸きません。そこにまたノックの音が・・・
ここからが良い所ですが、続きは次回のお楽しみ。忙しさで、第2回が再開できなくならない事を祈っていてください!
