昨日、おとといと美味しいトラットリアを紹介してきたが、今日は少しおなかを休めライトな話をしよう。モデナには教会の十字架のように主要な道が2本伸びている。というか、2本しか主要な道はないと言い換えた方が早いかもしれないが、まず町を横に分断する「ヴィア・エミリア」エミリア・ロマーニャ地方のまさに生命線である。それに対し垂直に伸びる短い道、ここが以前は宮殿、現在は士官学校(アッカデミア・ミリターレ)のある「ヴィア・ファリーナ」がある、そのアッカデミア側の入り口に。僕らがアペリティブを頂く店、「ヂュスティ」がある。(「ジュスティ」と表記すべきであろうが、イタリア人は「ヂ」と「ジ」の発音が厳密なのでそれに今は准じてみた。)
モデナには有名な惣菜屋さんが2つある。アチェートバルサミコの存在を世界に知らしめた「フィーニ」とここ「ヂュスティ」である。「フィーニ」の方は最近ホテル経営に精を出して有名なその味も少し落ちてきてしまった、といううわさもあるがこちらの店は食文化一辺倒。このバールの隣で依然としてお惣菜屋さんを続け訪れる客はひっきりなし。実はこの店の一本奥に入った道8入口は意地が悪いくらいわかりにくい。当然いつ空いているかもわかりにくいので、味わうには予約が無難)モデナ料理としても、伝統を踏襲しながら味、飾りつけにアレンジを加えるシェフの創意工夫さに毎回感心させられる。さて今回取り上げたいのはこちらのバールの方。店内はカウンターと小さなテーブルが2つ、新聞が置かれ食事はしにくい広さ。一角に、小さな引き出しのいっぱい付いた大きな箪笥。そう、薬箪笥、ここは昔薬屋さんだったのである。最もその昔は薬屋に強壮剤や暑さを引かせる飲み物、昨日テレビで知ったが日本で初めてビールが販売されたのは薬屋であったというから、お酒と薬はそういう関係にあるようだ。最も酒は百薬の長ともいうし、あのドニゼッティのオペラ「愛の妙薬で、インチキ香具師ドゥルカマーラにネモリーノが「惚れ薬だ」と信じ込まされて売りつけられた薬の正体は」赤ワインであった。話を元に戻そう。ここには最近通りの隅にテーブルといすが置かれ、少しゆったりと居座る事が出来るようになった。今回行ってみたら脇の教会の前の狭い広場にも机と椅子と日傘が設置されていたから結構好評だったのだと思う。ここでの魅了はワインを頼むとはじめは目を見張ってしまうようなおつまみが漏れなく運ばれてくる。ポテトチップなのの渇き物や、「エルバッツォーネ」と呼ばれる、ほうれん草をゆでパルメザンをあえてペースト状にしたものを件のニョッコフリットの生地に挟んで焼いたもの)や、ピッツァの切れ端(と呼ぶにふさわしい)やサンドイッチなど。良く韓国焼肉店に行くとこれでもかというくらい前菜が出てくるがあれに似ている。以前トリノに行った時この方式で前菜だけ12種類出てきた店があったし、マッジョーレ湖の奥の丘の上のレストランで前菜10品、プリモ3品、セコンド2品、ドルチェ付きという店に迷い込んだこともある。北イタリアの風習なんだろうか?いずれにせよ慣れないうちはこれだけでお腹が満足してしまうから注意が必要である。そしてここはその店の性格上ワインが美味しい。特に白ワインをきりりと冷やしてもらって、まあお願いしなくても実に的確な温度にしてあるが、それを大きめのワイングラスに注いで香りなども楽しみながら、道行く人を眺めて今日一日を振り返る、なんていうのが最高の時間である。これで10ユーロ、豊富なつまみに何か少し得をした気分になる。ただし問題は、アペリティブと称して昼間からこれをやってしまうことだ。街に出た後の夕方の練習は、なぜかいつもほろ酔い気分になっている。
追伸:昨日街のメルカートに出かけたら、僕たちが愛してやまなかった、おそらく世界一美味しいパニーニの店のメンバーが変わっていた。あそこの親父の作るパニーノは是非機会を作って日本の皆さんにも味わっていただきたかったのに・・・本当に、信じられないくらい残念!
